白マム印 日本のこと日本のもの

 
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村上龍、村上春樹、もう一人のMは、




宮本輝です。




彼らは多少の年齢差はあれど同世代といって
よいのではないでしょうか。
小説家としてデビューしたのもほぼ同じです。


1976年 村上龍  「限りなく透明に近いブルー」芥川賞受賞
1977年 宮本輝  「蛍川」芥川賞受賞
1979年 村上春樹 「風の歌を聴け」群像新人賞受賞


宮本輝は現代日本作家の売れっこ純文学作家のなかで
唯一、『超常現象』を小説の中に持ち込まない人です。

但し「泥の河」のお化け鯉や蛍川のラストシーンを超常現象と
ともとれますが。


    


    


さて、
村上龍さんはなんでもありで、テレビ番組も持つほどマスコミに
顔をだし、自分の腹のうちも上手にだす商売上手な作家さんです
からこの際、脇にて休んでいただきます。


問題は宮本輝さんです。

まず、村上春樹さん。
彼は日本の作家を全く相手にしていません。
あるいは日本の文学界(小説界)を、
相手にしていない。
といっても日本文学に関する教養は、
実家が寺でありお父上が国語の教師ということもあり
夕食を食べながら、「日本霊異記」や「源氏物語」が
とりざたされた中で育ち、相当なものです。
経済的にも恵まれている。


かたや宮本さんは家庭的に苦労をしいられ、小説の中に
苦労した自分が投影されている作家です。



ある時期、わたくしは宮本さんの作品を憑かれたように
読み食べました。
それは意図的に何かを得よう、つかもうとか、と
思ったのではなく、純然たる面白さにひかれてです。
デビュー作の泥の河からエッセイにいたるまで
貪りました。


そのときふっと浮かんだのが、

「宮本さんは、村上春樹さんを意識しているなあ」

ということです。
これは、わたくしの思いこみなのですが。

そして、「村上春樹さんを嫌っているなあ」

ということです。なにか文章にしるされているということ
ではありません。
何度も言いますが、わたくしの思いこみ、直感です。

面白いことに、宮本さんのファンは春樹さんを嫌っています。
あるいは読まない。友人に何人かそういう人がいます。
「村上作品は意味不明の絵空事」だそうです。

わたくしにすれば小説に意味を求めることはそれこそ無意味
で、物語として入り込んでいければ、それでよしなのですが。

かたや、村上春樹さんは眼のはしっこにさえ、宮本さんを
とどめていない。
彼の眼は外国の文学(特にアメリカ)にむいている。
これは宮本輝さんにしてみれば悔しいことだろうと思います。

以上がわたくしの思いこみです。








さて、芥川賞にもどりましょう。



1995年より芥川賞選考委員に宮本輝が
くわわります。

その翌年
平成8年(1996年)115回受賞作は


川上弘美 「蛇を踏む」です。






その物語の摩訶不思議なことと完成された美しい文章に
わたくしなど感嘆したものです。


選考委員

池澤 夏樹
石原 慎太郎
大江 健三郎
大庭 みな子
黒井 千次
河野 多恵子
田久保 英夫
日野 啓三
古井 由吉
丸谷 才一
三浦 哲郎
宮本 輝


選考委員の評価は非常に高いものでした。


丸谷才一の選評をあげましょう。

「文句のつけやうのない佳品である。
有望な新人を推すことができて嬉しい。」
「普通、変形譚といふと何か危機的な感じがするものだけれど
、ごく日常的な感じである。」
「普段の暮しのなかにたしかにある厄介なもの、
迷惑なものを相手どらうとしてゐる。それがじつに清新である。」
「書き出しもよく、真中もよく、結末もうまい。」


ところが、ふたりの選考委員がこの作品をまったく評価していません。

石原慎太郎と宮本輝です。

宮本輝は、

「私はまったく評価していなかったので、
最初の投票で委員の多くがこの作品を推した
ときには驚いてしまった。」
「蛇が人間と化して喋ったりすることに、
私は文学的幻想を感じない。」
「私は最後まで「蛇を踏む」の受賞に反対意見を述べた。
寓話はしょせん寓話でしかないと私は思っている。」


この選評はわたくしからすれば、宮本輝は自分を
「小説家としてみずからダメ宣言」をしたような
ものだとみてしまいます。
想像性と創作性の欠如。
小説家としてこの人はなにをやってきたのだろうと
さえ思ってしまいました。

「蛇が人間と化して喋ったりすることに、
私は文学的幻想を感じない。」・・・これが
売れっこの作家のいう言葉だろうかと
暗然としてしまいました。

泥川の鯉はなんだったのだろう。
あの瑞々しい感性はどこいいったのだろうと思って
しまいました。
「寓話はしょせん寓話」・・・寓話も物語であり
小説なのではなかろうか・・・。


  



また、わたくしの思いこみにもどります。

この川上弘美の選評を読んで
わたくしが思っていた「村上春樹嫌い」は
わたくしのなかで絶対的なものになって
しまいました。


    


村上作品は一角獣がでるわ、羊男がでてくるわ、
壁は通り抜けるわ、
それよりなにより寓話のつみかさねですから。


  


さて、記憶に新しい

平成23年(2011年)下半期146回は受賞は2名。

円城 塔 「道化師の蝶」
田中慎弥 「共喰い」


選考委員

石原 慎太郎
小川 洋子
川上 弘美
黒井 千次
島田 雅彦
高樹 のぶ子
宮本 輝
村上 龍
山田 詠美



円城塔の選評をみてみましょう。


「賛否がこれほど大きく割れた候補作は珍しい。」
「私はその中間の立場にいて、私には読み取れない
何かがあるとしたら、受賞に強く賛成する委員の意見に
耳を傾けたいと思っていた。」
「最近の若い作家の眼の低さを思えば、たとえ手は低くても、
その冒険や試みは買わなければならないと思い、
私は受賞に賛成する側に廻った。フィクションになりそこねた言語論
としてあらためて読むと、妙にフィクションとして成り立ってくる。」



これは宮本輝の評です。
この円城塔の作品は失敗作だとわたくしは思っています。
ところが、宮本輝は、

「受賞に強く賛成する委員の意見に耳を傾たい」
と、いい賛成票を投じます。


その、強くすすめたのが誰あろう川上弘美なのです。




芥川賞の選考委員のあれこれは一編の物語です。
これが面白うなかろうはずがありません。



今回の平成23年(2011年)下半期の選考をもって
石原慎太郎は選考委員を退くことになりその
席に奥泉光がすわります。
彼は小説家というより、職業選考委員です。
選考委員の手数料でたべているのかなあと
思えるほど、選考委員に名をつらねています。
地方の文学賞をのぞいてみてください。
彼の名前をあちらこちらで目にします。



再度 第1回選考委員の名をあげましょう。


川端 康成
菊池 寛
久米 正雄
小島 政二郎
佐佐木 茂索
佐藤 春夫
瀧井 孝作
谷崎 潤一郎
室生 犀星
山本 有三
横光 利一

小説で戦ってきた人々です。


小粒の選考委員に、血を吐く思いで小説をかいている
作家の卵が今もいるとしたら(田中慎弥?)
あれこれ言われたくないだろうと
わたくしは思います。



ここらで、村上春樹が選考委員になったら随分と
明日を夢見る無名の書き手を奮い立たせることでしょう。



  


  




*芥川賞あれこれ ///////


                                        前回/追記
    

参考文献・参考ウェブ
芥川賞90人のレトリック 彦素 勉 / 回想の芥川・直木賞 永井 龍男
/芥川賞の研究―芥川賞のウラオモテ(1979年) 永井 龍男
/文藝春秋/週刊文春/ウエブ 芥川賞のすべて・のようなもの


*「芥川賞のすべて・のようなもの」はとても優秀なサイトです。
興味のある方は是非ご覧下さい。
引用に関しては管理者の許可を得ていることを明記
いたします。

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